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ポンパドール・パラソル:野望編

旅行記や建築の話を書くブログです。

藤森照信「21世紀建築魂」はすごい感じ!

前置き

皆さんコンニチハ.暑くなってきましたね.
ぼくはさいきん,冷麺にはまっています.あまりに冷麺が好きになりすぎて,この夏は日本一の冷麺を探し出す旅に出ようかと考えています.きっと計画倒れですけどね.
さて,無意味な前置きは置いておいて本題に入るのですが,今日は何と,当建築ブログを読んでくださったINAX出版の方から,献本を頂きました.INAX出版様より献本御礼(一度言ってみたかった).

藤森照信 21世紀建築魂 ― はじまりを予兆する、6の対話 (建築のちから)

藤森照信 21世紀建築魂 ― はじまりを予兆する、6の対話 (建築のちから)

  • 作者: 藤森照信,藤塚光政,伊東豊雄,山本理顕,アトリエ・ワン,阿部仁史,五十嵐淳,岡啓輔,三分一博志,手塚貴晴+手塚由比,大西正紀+田中元子/mosaki
  • 出版社/メーカー: INAX?o
  • 発売日: 2009/06/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 3人 クリック: 15回
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藤森照信さんの21世紀建築評,そして21世紀注目の建築家との対談が収録されています.久しぶりに面白い建築本ですが,この本,建築だけでなく,近代以降のデザインにそこそこの興味があれば誰でも楽しめるようになっているので,超オススメです.

紹介

この本の著者である藤森照信さんは建築史家・批評家でありながら設計も手掛けていて,その語り口の面白さからとても人気がある方です.作品には例えば,高過庵(写真左)とかがあり,先日のsumikaプロジェクト(写真右)でも面白い建物を建てていました.
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architecturephoto.net様よりお写真を使用させて頂いております

このように,設計者としてはなかなか曲者っぽい,意識的に現代建築の主流とは切り離した建物を作る人なのですが,批評家としてはかなりズバ抜けて的確なことをビシッと,そしてとても面白く語る方です.で,献本頂いたこの本でも,かなり的確にビシッと言っていて,特に,冒頭の「論考:この先には何があるのか」では,近代以降の建築,とりわけ21世紀の建築について,ここまで的確に述べられているのを見たことはないぞ,というぐらい傑出したものでした.
まず,近代建築以前の建築界の停滞と,近代建築以降の飛躍について,以下のように述べています.

建築家たちは、過去や異国に新しい養分を求めてさまよい歩くのを止め、立ち止まり、自分の内側を覗き込んだのだ。人間の内側には、表現の基となる”わだかまり”のようなものがあるはずである。”わだかまり”などと曖昧にしか言えないが、人は、生まれ育つ間に、繰り返し外界を視覚的に経験し、そうした経験によって外界の視覚的エッセンスはその人の内側に貯めこまれ、しだいに”わだかまり”のようなものが形成される。人の真の造形はそこからの養分で展開するしかないに違いない。想像力とか創造力の源と言ってもいい。過去や異国といった外界に養分を求めることに行き詰った一九世紀末の建築家や美術家たちは、自分の内側を覗いたのである。

その「わだかまり」を各層に分け,アール・ヌーヴォーを一番上の「生命の層」,アール・デコを「鉱物の層」,デ・スティルとバウハウスを「数学の層」と位置付けて二十世紀建築の誕生を以下のように総括しました.

"生命にはじまり,数学に行きついた"
それが二十世紀建築の誕生のヒミツなのである。

そしてそれ以降は,

「数学の層」の中はより数学的抽象性を求めるバウハウス派と,物の存在感の回復を計るル・コルビュジェ派に二分された

"抽象"か"存在"か。

この流れの延長線上,「数学の層」の抽象性を究極まで突き詰めた位置に,妹島和世や西沢立衛,石上純也,あるいは藤本壮介らに代表される,細さ、薄さ、軽さ、透明、または機能の分離・内部と外部の反転を指向する21世紀の建築があるのだといいます.そしてこうした試みを「素空間の探究」と命名し,これが現代建築の主流であると論じています.
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OPAQUE GINZA(妹島和世)・海の駅なおしま(SANAA=妹島和世・西沢立衛)
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House before House(藤本壮介)・Dior表参道(SANAA=妹島和世・西沢立衛)

この「素空間の探究」という話,またそれに至る20世紀の建築についての話は,かなりイカした感じで,ズバリ的確なものだと思います.妹島さんや石上さんの建築のような薄さ,軽さ,透明を指向している作品は今,学生の間でもすごく多く見られるし,これは現代建築のひとつの主流であるといってまず間違いないでしょう.
しかし,本書で何度も引用される伊東豊雄さんの「妹島以後には興味がない」という発言にもあるように,今この瞬間は,それよりも一歩先に進んでいるのではないか,という気もしていました.例えばMIKIMOTO GINZAビル(伊東豊雄)はとても装飾豊かでそういう「素空間の探究」とは一線を画するものに見えます.
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もちろん本書ではそこまで踏み込んでいて,こうした「素空間の探究」を超えたレベルの話は,読んでみてのお楽しみですね.

藤森さんのハイパー能力について

こうした傑作と言える論考がありつつ,それだけのものを生み出せる藤森さんの観察眼はすごいという話なんですけど,これがどうして養われたのか,そのことについてはこれまでも何度か述べられています.本書でも同じように述べられていました.

(略)過去の建物を見るとき、”相撲を取るように見る”を課してきたことだろう。勝つか負けるか。建物を見て、何かに気づくか考えれば上手投げの勝ち、感動のあまり陶然となっただけだったら、押し出しの敗け。建築家が言ったり書いたりしていることしか分からなければ敗け、建築家自身も意識していないことを指摘できれば勝ち。駄作でも、なぜダメなのかを分析できれば勝ち、出来なければ敗け。作ることに負けないように見る。建築家に負けないように見る。そして感じ、考えたことを、必ず言葉のレヴェルまで抽象化し、書きとめる。

批評家かくあるべき,というこの文章,ただただ陶然となるばかりですよね…(完敗).や,冗談抜きにしても,カッコいいと思います.

この他のコンテンツ

阿部仁史,アトリエワンなどとの対談があり,伊東豊雄,山本理顕との三者対談が収録され,かなり充実の内容となっています(買って下さい).特に,阿部仁史さんとの対談が面白かったです.藤森さんもガンガン聞くし,阿部さんもガンガン聞いています.
あとはセルフビルド建築家の岡啓輔さんとの対談は,お互いセルフビルダーとして感化されるところがあるのか,岡さんの作品についてかなり突っ込んだ話が読めます.さいごのセルフビルド建築家であるところのこのぼくにも,そろそろお話が来るんじゃないでしょうか.

まとめ

久しぶりに面白い建築本を紹介しました.
菅野美術館(阿部仁史)の斜めの壁にいちはやく登って行った男・藤森照信さんの本,とても面白いのでぜひとも読んでみてくださいね.

藤森照信 21世紀建築魂 ― はじまりを予兆する、6の対話 (建築のちから)

藤森照信 21世紀建築魂 ― はじまりを予兆する、6の対話 (建築のちから)

  • 作者: 藤森照信,藤塚光政,伊東豊雄,山本理顕,アトリエ・ワン,阿部仁史,五十嵐淳,岡啓輔,三分一博志,手塚貴晴+手塚由比,大西正紀+田中元子/mosaki
  • 出版社/メーカー: INAX?o
  • 発売日: 2009/06/30
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