ポンパドール・パラソル:野望編

旅行記や建築の話を書くブログです。

白石一文-心に龍をちりばめて

心に龍をちりばめて

心に龍をちりばめて


白石一文さんの「心に龍をちりばめて」を読みました.

白石一文さんの作品はほとんど読んでいて,「一瞬の光」「僕の中の壊れていない部分」などは僕の読書暦の中でも特に大好きな作品です.偏屈でインテリぶった重層的な物語,スピーディでエモーショナルな文体が良くって,鼻の奥をツーンとさせながら読んでました.特に後者のほうでは,主人公のブンガクぶった極論がスピーディに展開されて,言いようのない感動を覚えた記憶があります.多分,登場人物に共感を求める人には無理な作品でしょう.

で,本作はそれらに比べると,かなり読ませる作品でした.説明的な文章がかなり減ったこともあり,白石さんの作品の中では比較的短めです.相変わらず伏線張ったり拾ったりは巧妙で,注視していなければ判らないでしょう.読売新聞の書評でのインタビューの通り,「エンターテイメントに徹した作品」なんだと思います.それでも他のエンターテイメント作品とはやはり一線を画していて,やはり地力がある人なんだと思いました.
僕はいつも,「僕の中の壊れていない部分」のような,陰惨な性格でインテリぶった主人公が,血の沸騰するような切れ味鋭い理論で中二病的に周囲を徹底的に否定する極端な作品を期待してしまいます.その期待はいつも裏切られるのですが,いつも別の意味で満足させてくれます.

白石さんの作品では,大抵,終盤に事件が起こります.
その後の,つまり最後のチャプターでの登場人物達の振る舞いを僕はいつも興味深く見ていますが,本作でもそれは示唆深く描かれています.この辺の描写が上手くて,頭の中にその光景が浮かんでくるような感覚でした.

前作の「永遠のとなり」よりも刺激的で,面白い作品だと感じました.単純に成熟してもらっては困るなあ,と思っていたので,かなり満足です.次回作にも勝手ながら期待しています.

一瞬の光 (角川文庫)

一瞬の光 (角川文庫)


僕のなかの壊れていない部分

僕のなかの壊れていない部分

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